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ホテルの名前は、ルボーバン(Le Bauban)。キャランタンの街の中心にある。一泊39ユーロ(約4000円)の安宿だ。
昨夜、泊っていたのは、私ともう一組だけだ。完全にシーズンオフである。
受付の女性は、30歳前後の、比較的綺麗なお姉さんだった。 出発前に朝食を食べていたら、暇なのだろうか、とにかく、このお姉さんが話かけてくるのである。 「パリに住んでいるのか」 「自転車で、昨日はどこへ行った。今日は、どこへ行く」 「このホテルのHPを観たか。私が撮った写真が載せてある」など、ゆっくり食事をしている暇もないほど、よく喋る。 自転車道案内のリーフレットを、どこで見つけたのか、1つくれた。 昨日より、風が強くて、今日は自転車の旅は辛いだろうが、頑張ってね。と、見送ってくれた。 |
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案の定、海岸は、風が強かった。しかも、冷たい風が吹き荒れていた。冬の日本海を思わせる景色である。
波の華も、風で舞っている。
この寒い中を、手袋もせずに、自転車を漕いでいるせいか、寒さで指が痛い。持ってこなかったことをつくずく悔やむ。 |
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「この寒い中を、この人、何やっているのでしょうねえ。」
「いやあ、自転車に乗っているらしいけで、本当に楽しいのかなあ。」 「いい年齢こいて、元気があるなあ。僕らも、見習わないと、いけないよね。」 |
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1944年6月6日、この海岸に連合軍が上陸した。今から、67年前である。
この海岸には、至る所に戦争の跡が残っている。当時、20歳であった青年は、今は、87歳である。
時は過ぎて、平和な世の中になり、外国人が自由にサイクリングできる時代が来た。 |
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連合軍のノルマンディー上陸を題材にした「世界最大の作戦」という有名な映画がある。
私も、この映画は観た。映画の中で、落下傘部隊の隊員が、教会の鐘に引っかかって、
下で繰り広げられる殺戮を観るシーンがある。私は、この話は、実話ではないと思っていた。
ところが、サントメールエグリーズにあるこの教会を見て、これが実話であることを知った。 実際、教会の鐘の所に、パラシュートと人形が飾ってある。 教会の隣に、落下傘部隊の博物館がある。中に、入って、ゆっくりとその時代にあった戦争のことを知った。 1944年から1948年までに、6000人の米国の青年が戦死したとのことである。 博物館から出たら、空は、晴れ渡っていた。空の青に、教会の鐘塔が映える。 |
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午後5時には、キャランタン(Carentan)に帰ってきた。朝から、よく走った。クタクタに疲れた。心地よい疲れだ。
とりあえず、恒例になった駅前のカフェでビールによる水分補給を済ます。 ビールを飲みながら、変なことを考えた。何年か後に必ず来る「お迎え」は、こんな感じなのだろうか。十分、生きた。 そして、疲れた。全ての記憶を忘れて、自分自身の事も忘れて、電車に乗るだけ。19時16分の電車に乗るだけ。 |
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