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日付: 2016年7月29日
場所: テンネン山塊山麓一周70km走(Tennen gebirge)
地域: オーストリア(Austria) ザルツブルク州(Salzburg) 
訪問地: Golling an der Salzach parking area(476m), Voglau, Annaberg, Sankt Martin(949m), Niedernfritz, Pöham, Burg werfen, Golling an der Salzach parking area(476m)


 


野宿明けの朝

 昨夜は車の中で、500tの瓶ビール2本を飲んだ。そして眠気が激しくなり、午後10時前には寝入った。 早朝目覚めた時には、私の乗用車の周りは、キャンピングカーばかりであった。  

 野宿した場所は、前夜と同じのゴーリングのパーキングエリアだった。実は、このパーキングエリアは気に入っている。 とても野宿がしやすいのである。雰囲気がキャンプ場のそれと似ている。 午後9時を過ぎれば、大概の車は、このパーキングエリアで夜を明かす人々でいっぱいになる。どことなく安心感がある。  

 身分証明書類を全部、アパートに忘れてきてしまった今の私には、何とも心地良い場所だ。    

 

 

 


  今日の計画は少しハード  

   天気は期待していたほどでもない。山々の峰は雲で隠れてしまっている。時折、空が明るくなることが救いだ。

 ザルツブルク市の南40q程のところに、鋭い峰が立ち並ぶ山塊がある。テンネン山塊(Tennen gebirge)だ。 地図で見る限り標高2,000mから2,400mの山々が立ち並ぶ。如何にもアルプスらしい山々だ。

 今日は、この山塊を一周ぐるりと廻ってみるつもりだ。 距離にし約70qの走りになる。 最低標高地点は出発及びゴールとなるゴリンクの町で、標高は476mだ。 最高標高地点は、行程のちょうど半ばにサンクトマルタン(St Martin)という村があり、そこの標高が949mだ。 ざっと計算して前半が標高差が約500mの登りで、後半がその下りとなる。

 幸いに、私が計画したルートには、自転車道がある。これはラッキーだ。



 

 


雰囲気良き自転車道  

   10qほど走る。周りは、しだいに田舎風景になる。遠くに険しい石灰岩の山々が視界に入る。まわりは、夏草が所狭しと生える。 なかなかの雰囲気だ。近くを国道が並走しているが、そこを通過する自動車の走行音も気にならない。  

 進行方向に向かって右側にラマー(Lammer)川が流れる。この川は、いろいろな川と合流するが、最後には、ドナウ川に行き着く。  

 

 

 



道路沿いのカフェで一服  

 自転車での峠登りや坂登りは、終点がはっきりしている。これは目的がはっきりしているので、そこに向かて猪突猛進するだけだ。

 ところが、平地走りは、ただ単に珍しいものや変わったものが、周りにないものかと探しながらの走りになる。 山塊一周と言う明確な目標はあるが、しばらく走ると、どことなくダラダラ感を感じ始める。

 そんな時は、道沿いのカフェにでも立ち寄り、息抜きをする。 よくよく考えてみたら、何時間も同じことをやっているわけで、飽きもくるもんだと思う。

 時刻は、午前11時を少しまわる。立ち寄ったカフェは、アナベルグ(Annaberg)という標高が800m程度のところにある小さな店だ。 家族経営らしい。旦那とその奥さんらしき人が二人、店の中でテーブルを前にして座っている。暇そうな気配だ。

 店の外に置かれた椅子に座る。すぐに奥さんが注文を取りにきた。注文は何にするかと聞かれる。コヒーとケーキをお願いする。 ケーキは何にするかと再質問だ。その奥さんは、店の中にケーキがあるから食べたいものを選べと言う。言うとおりにする。

 ケースに並んでいるケーキを観るが、観た目があまりに甘そうで、今一つという感じだった。結局、ケース手前においてあったクロワッサンを頼む。

 店は大通りに面していた。ひっきりなしに、自動車やバイクが通過する。どうも落ち着かない。



 


雰囲気良い家

   しばらく走る。すると右側に如何にもアルプスらしい古びた家にでくわす。 当然と言えば当然だが、家の飾りが木材だらけである。屋根張も、なんと雨どいまで木製である。

 どうもレストランか何かに使っているようである。しかし、なぜか印象に残る家である。

 「もしもピアノが弾けたなら」という歌があったが、「もしも絵画が描けたなら」と思いつつ、何の特技も持たない自分に残念を感じる。  



 


なんとも面白いインフォメーションセンター  

   サンクトマルタン(St Martin)の村に着く。教会近くにインフォメーションセンターがある。このセンターには扉というものがない。 自由にお読みくださいという本が100冊ほど並んでいる。その隣に、タッチ式の案内板がある。

 このタッチ式の案内板は、まさにAndroidをOSにしているようで、とてもしっかりしている。 面白がって、ちょっと使ってみたが、かなり使えそうである。パソコンを使っているのと同じ感覚である。 しかし、このパッチ式案内板にイタズラする人はいないものなのだろうか。オーストリアという国の治安の良さには驚きである。 日本など比べ物にならない。



 


 教会横で昼食  

   時刻は正午をまわる。青空が見え始めるとともに、強烈な太陽光線が降り注ぐ。 長ズボンと長袖シャツだから日焼け対策は良いが、とにかく眩しいのである。早速、サングラスをかける。

 今回は、いろいろな物を持ってくるのを忘れた。お箸もその一つである。フォーク一つあれば、何とかなるが、それもない。 店で1本だけのフォークを買うのも、ばかばかしい。

 したがって、道沿いに生えている木々で、ちょっと腰のありそうな枝をちぎって、箸代わりにする。

 Döham村の教会横にベンチがあった。そのベンチは教会の壁に面していることから、日陰になる。そこで食事をする。 腰のない棒切れを使って、缶詰をつつく箸使いは、どことなく情けなさが漂う。還暦過ぎてのこの姿は、誰にも見せたくないものだ。



 


みごとな山々  

   天気が良くなって、視界もよくなる。テンネン山塊の山々の全貌が見え始める。 ずいぶんと険しい山々である。地図を見る限り、登山道は見当たらない。この山々では、かなりの上級者でないと登るのは無理だろう。



 



人で込み合うボッタクリ城  

     ベルファン城(Burg Werfen)という城がある。この城は古く周りの景色の中で異彩を放っている。 高速道路を走行していても、この城はしっかり見える。一度、訪れたいと思っていた。

 この城は、結構、有名なようである。何と、坂を登らずに、登山電車で登ることができる。 お年寄りや子供にとっては、アクセスが楽だが、逆に、頂上の城の中は、入場が便利過ぎて、人だらけになってしまう弊害もある。

 時刻は、午後2時過ぎ。興味深々で、この登山電車に乗ってお城の中まで行ってみることにする。 片道料金は14ユーロ(1,600円)、往復で16ユーロ(1,800)との張り紙。ほんの5分程度しか乗らないのに、ずいぶん高い料金である。 夏だけしか営業していないから、その分、高価になることはわからないでもないが、これはボッタクリである。  

 片道チケットを買う。そして登山電車に乗る。待つことなく、電車は発車し、すぐに到着である。標高で、100mくらい登っただろうか。

 案の定、登山電車の終点、つまり城の場内は、人でごった返していた。城中に入るには、ツアーに入らなければならない。 そのツアーの列が何十メートルも連なっていた。がっかりである。炎天下、とてもその列に並ぶ気がしない。

 下山は、下山道を徒歩で下った。緑の木々の中のくだりである。こちらの方がうんと気持ちよかった。 城は外から眺めるものであり、中に入るものではないことを実感する。



 


サイクリストと抜きつ抜かれつ  

   時刻は、午後3時を回る。ザルツブルク川(Salzach)沿いの国道を走る。幸い、下り道なので、脚には負担がかからない。 難点は、この国道には自転車道は並走しておらず、自動車やオートバイが高速で追い抜いていくことだろう。これには興ざめである。

 終点のゴリンクまで18kmの表示を見つける。この年齢になって、一日の走行距離が70qを越えることは辛い。 体力よりも、気力の方がキレそうである。

 一人の若者が、同じように私と同じ道を走っている。年齢は20歳代だろうか。彼も私と同じ一人旅だ。 サイクリング車に乗り、後輪の両脇に荷物を括り付けている。私よりは自転車といい、もっている荷物といい、かなりの重装備である。

 その若者と抜きつ抜かれつの走りである。別に対抗心はないのであるが、自然に、そんな走りになってしまう。

 ザルツブルク川(Salzach)の渓谷を抜けて、ゴリンクの町に近づく。私は、このサイクリストに手で挨拶して追い抜く。その後、追い抜かれることはなかった。

 午後3時半に出発点に戻る。休み休みではあるが、計7時間の走りは疲れた。今回の遠征は、これで打ち切って、ウィーンに帰ることに決める。