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日付: 2016年7月17日
場所: チロル地方・コウネルトラ氷河道路(Tirol Kaunertaler Gletscher Straße: 標高2,750m)
地域: オーストリア(Austria)
訪問地: A12-Mils Raststation, Prutz, Feichten(1,287m), (Kaunertaler Gletscher Straße), Gletscherrestaurant(2,750m), A12-Mils Raststation, (car), Wien


 


天気は今一つ

 午前6時前には目覚めた。と言っても、トイレのために何回か目覚めたが、、。 結婚披露宴のバカ騒ぎは、結局、午前3時くらいまで続いていたようだった。人生に一回だとはいえ、何とも疲れる宴会だろう。  

 さて、勝負の日は訪れたが、空には雲がかかっている。あれれ、これでは昨日の土曜日より悪いのではないかと考える。  

 目指すは、舗装道路が標高2,750mまで続くコウネルトラ氷河道路(Tirol Kaunertaler Gletscher Straße)だ。 欧州でも片手に入る数の山岳道路だ。   

 この氷河道路は有料だ。ただし、自転車は無料である。私の知る限り、欧州において有料の自転車道路はない。ここにも日本との自転車文化の違いを感じる。  

 午前7時10分に有料道路入口に到着。この有料道路、結構、太っ腹なところがある。 朝の7時までは、全ての車が無料であるが、午前7時を10分や20分過ぎても、車は料金所を素通りしている。なんとも言えない余裕だ。  

 午前7時30分に山岳道路の入り口を通過した。ここの標高は1,287mという。したがって、今日の標高差は1,500mだ。距離は24q。結構、大変な格闘戦になる予感。  

 

 


  ダム坂の最初の山場  

   この山岳道路は、地図で見る限り、途中で湖の湖岸を走る。距離にして4q〜5qだ。この区間は、湖岸を走ることから標高差はあまりないことがわかる。

 山場は、後半の三分の一で、ここで一気に1,000mほど登ることになる。後半に難所が予想されて、これは辛い。

 自転車で山奥の普通の風景の中を走る。すると目の前に大きな人工物が見え始める。石を山積みしたロック式ダムの堤防だ。 これを観て、なるほど、結局はあのダムの湖面まで、いずれは登ることを意味するから、第一の関門だと悟る。

 走り続けると目の前に第29番目のカーブの表示盤があり、そこに標高1,641mと書かれているのがわかる。 すでに500m近くを登りきった。坂登りは、我慢比べだ。焦っても、当然のことながら、標高は稼げない。 じっくりと一ペダル毎の積み重ねが、成功につながることを実感する。



 


湖面の沿岸走りは終わり本格的な坂へ  

   ダムを登りきる。そしてダム湖の横に作られた道路を走る。このダム湖は、1960年台に造られたということで、もう50年近くの歴史がある湖だ。 残念ながら、今日は水位が落ちているので、湖岸横の崖の岩肌が露出している。あまりきれいな風景ではない。  

 湖岸走りを終えて、すぐに急坂登りが始まる。さあ、本格的な勝負の始まりである。    

 

 



 松林といろは坂  

 傾斜12%の坂が、いろは坂の如く目の前に続く。救いは、カーブ毎に掲げられている掲示板の数字だ。 これが一つ一つ減っていくのである。苦痛のみが蓄積する退屈な登りだが、ここで面白い遊びを思いついた、。 坂番号の数字の年齢の頃に何をしていたのかなあと考えながら走るのである。19であれば、19歳の頃の大学生の頃のことを思い出してみる。 そんな感じで、登り続ける。

 途中で、一枚の説明看板を見つける。この地域に生える松の木のことだ。この氷河道路を造る際に、この 地域に生える松の森を見つけたとのこと。ただ単に、山で見かける松林だけのことだが、この森林は、 氷河時代には、ウィーン市がある周辺まで生育していたとのことである。その後の暖期に、標高の高いところに押しやられて、今の状態になっているという。 そんなことが理解できるとは、地球は面白い。



 


森林限界を突破

   標高が2,200mを越える。森林限界を抜ける。これよりの高所は道路沿いに樹木は生えない。

森林限界を越えると、気圧が下がってしまうためか、息使いが荒くなる。 数十メートル走る。そして自転車を停める。深呼吸する。深く。その繰り返しである。 多くの自動車が、追い抜いていく。意外に、サイクリストの数は少ない。





 


最後の50mの喜び  

   標高2,735mで第1カーブの標識に辿りつく。標高1,600mで始まった第26番目標識もついに1まで減った。 あと標高差15mでゴールである。目の前に、無機質な建物群が広がる。

 さすがに2,700mを越えると植物の姿は見当たらない。岩と雪の世界だ。 よくぞここまで登ってきたものと思う。

 ゴール直前で赤い色の自動車とすれ違う。今から、下山するものと思われる。 その助手席から女性が拍手をしているジェスチャーが見える。思わず、笑顔で手を振った。 やっと到着したのである。

 時刻は、午後1時を回っている。道草を食べながらのゆっくりサイクリングであるが、都合、5時間超の格闘戦が、ここで終わった。



 

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氷河スキーを楽しむ場所  

   この標高2,750mのポイントはスキー場である。 誰一人とスキーを楽しんでいる人はいないが、雪上車が雪の手入れをしている。今から、スキー場開きだろうか。

 レストランで食事をとる。褒美にビールを飲む。これが、最高にうまい。 標高2,750mで冷えたビールが飲めるとは、これはもう、天国である。 5時間超の苦労の末の一杯、もう死んでも文句は言わない気分だ。



 


面白いオブジェ  

   苦労して登って来たのに、すぐに降りる気になれない。スキー場の周りの山々の写真を撮る。 ところが、紫外線対策をせずに、これをやってしまった。結果は悲惨だった。顔がほてってしまい、 どうしようもなくかゆいのである。目によくなかった。今後は、気を付けよう。高い山と紫外線。

 ゆっくりと休みながら下山する。途中、山歩きもしてみる。面白いオブジェを見つける。

 何かの映画で、こんな鳥に乗って冒険するシーンがあったような気がする。まさに、鳥に乗って、 山々を飛び回る感覚を覚える素晴らしい景色だ。 

 今日は、一年に何日もない、感動的な一日だった。