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日付: 2016年5月7日
場所: ラフェルクラウゼ峠(TaferlKlause:標高829m)、
地域: オーストリア(Austria Republic) 上オーストリア州(Oberöstrreich)
訪問地: Wien, (car), Lindachparkingstation(Salzburgside), Scörfling, Weyregg, Bach, Umberg pass(785m), Reindlmühl, Altmünster, Viechtau, Neukirchen, Tafelklause pass(829m), Steinbach, Weyregg, Scörfling, Lindachparkingstation(Wienside),


 



寂しい駐車場

5月。最近は、だいぶ暖かい日が続くようになった。日中の気温は20℃超で、朝方の気温は5℃前後だ。こうなれば、そろそろ車中泊が可能な季節になってきた。

 ということで、今年初の車中泊に挑む。狙う宿泊場所は、オーストリア国内の高速1号線上でリンツ市とザルツブルグ市の間に位置するリンダッハ(Lindach)というパーキングエリアだ。ウィーンから西に約250km走ったところにある。天気予報の最低気温予測は摂氏7度。これなら寝袋を二つ持参するから楽勝だろう。

 金曜日の夕方6時半にウィーンを出発。午後9時過ぎには、目的のパーキングエリアに着いた。夏になると、高速道路のパーキングエリアは、キャンピングカーや自動車内で夜を明かす人々でごった返す。ところが、5月の中旬はまだまだオフシーズンだ。長距離トラック以外の車中泊組は、どこにも見当たらない。寂しい駐車場だ。これだけ寂しいと警察に声をかけられそうで心配だ。

 自動車の後部に、マットと寝袋を準備し、分解した自転車を横に置いての車中泊だ。寂しい夜だ。缶ビールを二本飲んで、良い気持ちになる。そして寝入った。  

 

 


天気の良さにほれぼれ  

  夜中に何度か、目覚めた。車中泊ゆえに、まあこんなもんであろうと思う。午前6時には、完全に起きる。自宅寝と比べても、ほとんど変わらない目覚め感だ。今年初の車中泊は成功である。やはり、寝袋2重にして寝たのが良かったようだ。  

 軽い食事を摂り、歯磨きする。自動車の寝台をかたづけ、今日の走りのためにリュックに食べ物を詰める。パン、バナナ、リンゴ、それに缶詰一つだ。そして足早にパーキングエリアを出発する。時刻は、午前7時をちょっと回ったところ。目指す場所は、20km程離れたアター湖(Attersee)だ。  

 ショルフィリンク(Schlrfling)市の鉄道駅裏にある駐車場に車を停めて湖畔まで走る。無風、雲一つなく晴れ渡った最高の朝だ。ジョギングに精出す若い女の子が、にっこり顔をして「おはよう」と声をかけてくる。気分良しだ。

 湖の東岸を南下する。国道152号を下る。この国道沿いには、自転車道がない。週末なのに、車は頻繁に通る。若干、気をつかう。どうも、湖岸沿いには個人宅が並び、自転車道を造るスペースがないように見受けられる。ところどころに、歩道者用のレーンは作られているのであるが、これは残念だ。



 



2度目の朝食  

  ウェイレック(Weyregg)の町に着く。時刻は午前8時過ぎだ。今日、二度目の朝食を摂るために、道路沿いに見つけたカフェに入る。オーストリアのパン屋やケーキ屋さんには、必ずと言って良いほど、カフェが付随している。店の中に入る。途端に暇そうな女将が、話しかけてくる。「何にしますか?」、こちらは覚えたばかりのたどたどしいドイツ語で「コヒーを飲みないのだが、可能ですか?」「もちろん」と言って、奥のテーブルまで案内してくれる。

 店の奥にあるカフェに通される。部屋には先客が居た。一人の男がテーブルの上に飲み掛けのビール瓶を置いて、雑誌に目を落としている。この光景は、どこのカフェでも見かける定番風景だ。しかし、この時間の朝酒とは、すごい。いくら自己責任の世界とは言え、朝っぱらからアルコールとは、大丈夫かなと心配する。  

 

 



おっさんとの競争  

 ウェイレック(Weyregg)の町を左に折れる。湖岸から離れるにつれて高度が増す。登りが始まる。バッハ(Bach)の村を過ぎると、舗装道路が終わってダート道が始まる。林道となって一般自動車は立ち入り制限エリアとなる。

 私が、ゆっくりとペダルを漕いでいると一人の結構、年配そうに見える男がマウンテンバイクで私を追い抜いていった。この男は、結構、とばして走っている。足の蹴りと上半身の揺れ具合から、気合が入っているように見える。ところが、20分程すると、この男の背中が見えだす。そして、その背中がどんどんと近づいてくる。かなりバテている様相が伺える。

 そして私は、この男を抜いた。全行程を頭に入れて、力配分を考慮しての走りが勝ったのである。

 私は、写真を撮りながらの走りだから、結局は、彼に抜かれた。しかしこのおじさん、随分と対抗心を燃やして私と競っている様相だ。ただ、このおじさんは、なぜか峠に達する前に、引き返してきた。すれ違い様に、手を挙げて挨拶を交わした。オジサンも笑い顔で、手を振ってくれた。  



 


突然の進入禁止立札

   標高785mの峠に着く。南に、標高2000m級の山々が連なる。まだまだ雪渓がととろどころに見える。

 下り始める。すると、なんと林道の真ん中に通行止めの看板が置かれている。ありゃりゃと思い、どうしたものかと思案する。すると、まったく偶然ではあるが、通行止めになっている道の向こうから若夫婦らしいカップルが自転車で登ってくる。

 一所懸命に漕いでいるので、声をかけることをはばかるが、「この道は、下りることができますか」と英語で声掛けしてみる。すると、二人は登りの自転車を停めて、ハアハアいいながら、「大丈夫。気をつけていけば降りられる」と英語で答えてくれる。この二人は親切なことに、聴いてもいないことまで、しっかり説明してくれた。私より英語がうまいのである。



 


この空の青さをなんだろう  

   道路の崩れ部分では、自転車を抱えて渡りきる。そして、森を抜けると、真っ青な空がまばゆく開け放された野原に出る。感心するほどに晴れ渡った空である。

 思うに、日本では真冬にしか見られないような真っ青な空が、ここでは夏にも見ることができる。黄砂がない、大気中の水蒸気が少ない、そもそも空気が綺麗などの好条件が重なっているのだろう。サングラスは必需だと強く感じる。次からは持参しよう。



 


太陽光線を好む人々  

  トラウン湖(Traunsee)に着く。走り始めたアター湖(Attersee)との距離は10数キロしか離れてはいない。ところが、双方の湖の様相はがらりと違っている。トラウン湖(Traunsee)は、東岸近くにギザギザの頂上が連なるトラウンスタイ(Traunstein:標高1,691m)が迫る。そして、南には3,000m級の氷河を抱いたアルプスがの遠方に見える。まだまだ自然が残っている感じだ。湖岸に並ぶベンチの中で、日陰となっている場所を探す。

 思うに、こちらの人々は、とにかく太陽が好きだ。強い太陽光線の下で、日光欲をしている人を多く見かける。また、ベンチに腰掛ける人々は、競って、日当たりの良い場所を好んでいるようだ。そんな人々を目にするたびに、暑くないだろうか、それに紫外線が怖くないのだろうかと変なことを考える。



 


峠の登りに、物足りなさを感じて  

  トラウン湖(Traunsee)を離れて東側に進む。今日の最高高度地点となる標高825mのタフェルクラウゼ峠を目指す。気合いが入れる。背中には、トラウンスタイ(Traunstein)の山々が、いつまでもくっ付いているような感じだ。いつまでたっても、視界から外れない。

 タフェルクラウゼ峠には、あまり苦労せずに到着した。湖との標高差が300m程度だから、知れたものである。そして、若干、物足りなさを感じる。ただ、峠の前に、小さな湖があり、そこには、たくさんの自動車が駐車していた。最初、ここを峠と間違えた。実際の峠は、その湖からさらに1km程、登ったところだった。一度、緩んだ気合いを再度奮い立たせるには、力がでない。たったの1kmではないかと自分に言い聞かせる。そして登りきる。



 


 峠でみつけた自転車専用のキャンピングカー  

  峠の南側には、切り立った絶壁の山々が並ぶ。南側には、深い森がある。峠の看板は立っていない。この国では、この程度の高さの峠は、当たり前すぎて名もないのであろう。ひっきりなしにゴーンという爆音をあげてバイクが通り過ぎる。この峠は、二つの湖を結ぶ重要なポイントであるように見える。

 ワゴン車が一台駐車していた。その車は、自転車を運ぶことに専念したキャンピングカーの様相だ。幸いに後部の観音開き扉があけ放されていた。中には一台のマウンテンバイクが固定ケーブルに縛られている。床には発電機が置かれている。自動車内では寝泊りも可能なようだ。市販車か、あるいは改造車か、いずれにしても羨ましい限りである。自分もあんなキャンピンクカーで世界を旅してみたいものだと思う。



 


中国人の元気さ  

  午後5時半には、出発点のショルフィリンク(Schlrfling)に帰ってきた。今夜も車中泊を予定している。今の季節、まだまだ太陽は高い。午後9時をすぎないと暗くなり始めない。

 まだまだ寝泊りのために、高速のパーキングエリアに行くのは早すぎる。時間つぶしに、今日の午後に訪れたトラウン(Traunsee)湖畔のグムンデン(Gmunden)という名の街を散歩してみようと考えた。

 街を散策した後に、湖岸の遊歩道のベンチに座る。近くに売店があり、そこでアイスクリームを買って、それを舐める。しばらくして、これに飽きる。湖岸を歩き始める。散策を楽しむ人たちも多種多様だ。いろいろな人種の人たちが散策しているのがわかる。アラブ系のオバサンだろうか、黒いチャドルを羽織りながら、アイスクリームを舐めている。ちょっと、その姿が面白い。

 ちらほらと東洋人も見える。どう見ても中国人である。若い彼らはカップルで、楽しそうにカメラを胸に下げて散策を楽しんでいる。思うに、どんなに田舎に行っても、中国系の旅人に出会う。日本人は、観光ガイドブックに載らない田舎町には来ない。知らない物に出会ってみたいという好奇心は、はるかに中国人の方が強いように思える。旅人数の母数集団が多いからか、あるいは中国人が個性的な旅に興味を持っているからなのだろうか。