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日付: 2016年3月26日
場所: ビーズ教会(Wieskirche)
地域: ドイツ(DeutchLand) バイエルン州(Bayem) 
訪問地: Bad bayersoien, Echetsbach, (Romantische Straße), Morgenbach, Schwaig, Wieskirche(UNESCO Weltkulturerbe), Unternogg, Altenau, Saulgrub, Bad bayersoien


 


ホテルは大きな部屋

 宿泊したホテルはアパート形式だった。 山小屋風の建物の屋根裏全部を占拠した部屋で寝室、リビングが分かれていた。面積的には70平米くらいあるだろうか。  

 昨夜、このホテルにチェックインするときに少し戸惑った。 普通、ホテルは建物のどこかにホテル名を掲示している。 私は、それが当たり前だと思っていた。ところが、ホテルの住所らしきところには、普通の民家が一軒あるだけだった。  

 まあ何とかなるだろうと玄関で呼び鈴を押す。誰も出て来ない。なんとも不親切だ。おおよその到着時間は、メールで連絡しているのにだ。 何度も、しつこいくらい呼び鈴を押し続ける。すると、たまりかねてか70歳を超えているであろうおばあさんが出てきた。
「私の名前は○○だ。チェックインしたい」「良く分からない。(管理人に)電話をしてくれ。」とつれない返事。
電話をしようと思うが、私の携帯では、外国(ドイツ)では使えないのである。  

「私の電話は使えない。」「ここの家電話で、お願いしたい」と通じているか、いないのかわからないがまくし立てた。
 

 すると、老女の亭主であろう80歳過ぎのおじいさんが杖をつきながら玄関に現れた。変わって、おばあさんは家の奥に消える。電話をしに行ったようだ。 電話を通した話し声が聞こえ、時折、ドイツ語で「日本人」という単語が聞き取れる。 はてな、どうして私が日本人だとわかるのだろう。オーストリア在住で、住所もオーストリア国内だ。これは不思議だ。
 おじいさんは、カタコトの英語を話す。「10分程度で、ホテルの管理人が来るよ。まあ、待っていてくれ。自動車は、あちらに停めておいてくれ。」と指さしてくれた。  

 後々、知ったことだが、バイエルンのこの地方は、民家をホテル代わりに使わせるしくみが、どうもあるようだ。  

 

 


村のパン屋で一服  

     宿泊したホテルはバド・バイエルソイエン(Bad Bayersoien)という名だ。ドイツの南部に位置する村で、標高が812mと結構な高地にあり、人口は約1000人程度だ。 近くにスキー場もあり、まさに保養地的雰囲気の漂う落ち着いた村だ。

 今日は土曜日。明日と明後日はイースター祭だから、大体の店は閉まってしまうと思う。村で買物ができないかと思い、村の中心に行ってみる。 人が集う一軒の家があり、壁にパン屋の屋号が描かれている。朝食は、すでに済ませてはいるが、面白そうなので、どんなものかと店の中に入ってみる。

 パン売り場前にできた行列に並んで順番を待つ。私の番がやってきた。ここで、コヒーをのみたいが良いかと聞いてみる。「良いよ。コヒーは何が良いか?」。 店内にはテーブルが二つある。その一つの前に座り、コヒーを待つ。向かいの席には、未亡人であろう老婦人が、1人で座って、コヒーを飲みながらゆっくりとパンを食べている。 どことなく貴賓がある。

 店内には、毎日、定刻に買いに来るであろう常連客が、次々にパンを買っていくのであろう。耳を澄ませて、彼らが話す言葉に注意してみる。 パンの固有名詞までは、聞き取れないが、数字はわかる。ドイツの田舎の村の日常は、こんな感じで時間が進んでいるのかなと考える。



 


空に晴れ間が現れる  

   今日は、世界遺産で有名な、ビーズ教会(Wieskirche)の天井フラスコ画を観るつもりだ。 時間が余れば、周辺の村々をブラブラしたい。ビーズ教会(Wieskirche)までの距離は、おおよそ15km程度だろう。これはラクラクだ。  

 屋根裏部屋には明かり取りの窓がある。その窓を雨粒がパラパラと叩く。この音は、夜中、続いた。 外の道路は、雨に濡れ、ライトの光を反射させていた。  

 自転車で、バド・バイエルソイエン(Bad Bayersoien)村から、北に向かって走る。時刻は、午前9時を過ぎる。羨ましいくらい立派な自転車道だ。 この自転車道を走っていると、周りが次第に明るくなってきた様相になる。そして雲の切れ間に青色の空が現れ、晴れ間は、すぎに広がり、やがて太陽が見えだした。  

 雨に濡れた牧草が光る。新緑がまぶしいくらいだ。これは良い日になりそうな予感だ。  

    

 

 


ロマンティック街道とアルペン街道  

 ロマンティック街道とアルペン街道は、ドイツ人が世界から観光客を集めるために名付けた街道だ。 これはうまくやったものだと感心する。「ロマンティック街道」なんて、響きの良い名前を聞いたら、日本人のみならず世界の人々はイチコロだ。 いずれも20世紀になってからのことで、今では、街道沿いの町々で15,000人の雇用を生んでいるとのことだ。

 ただ、ロマンティック街道もアルペン街道も、あまりに道路が整備され過ぎていて私の見る限り素朴さに欠ける。 まあ、街道そのものが売りではなくて、街道沿いの古い街並みが売りだから、これはしょうがないことだろう。

 ということで、自動車が時速100kmでぶっとばす道路は、自転車にとって何の面白みもないので、すぐに田舎道に入る。 幸いビーズ教会方面を示す自転車用の道路案内を見つけた。





 


遠方に見えるが世界遺産の教会

  ビルドスタイグ (Wildsteig)という小さな村で、昼食用にトマトとチョコレートを買う。そして村の観光案内看板を観ていると、ドイツ人二人が看板前にいた。 そして英語で私に話しかけてきた。 「どこから来たのか?」
「今朝は、バド・バイエルソイエン(Bad Bayersoien)を出発して、10kmほど自転車で走っている」
「もとはどこから来たのか」
「少し複雑だ。今はオーストリアのウィーンに住んでいるよ。生まれは日本だけど。貴方たちは、何をやっているのか?」
「3日間のハイキングを行っている。街道の沿いのハイキング道を歩いている。今から、Wies教会に向かうよ」


 と言いつつ、片方のドイツ人が私の乗っているGiantのMR4を観て、

「見かけない自転車だね。ショックアブソーバが付いている。でも、クランクはSHIMANOの105ではないか。これはレース用のクランクだね」


 このドイツ人、自転車にはかなり詳しいようだ。「SHIMANOの105」を知っているとは、かなりの通である。

緩いアップダウンを登ったり下ったりしながら、やがて遠方に、まわりの景色とは不釣合いな建物が現れる。これがWies教会だった。



 


見事なフレスコ画  

   教会から100m位離れたところに駐車場がある。どうだろう30台くらいの自動車が駐車しているだろうか。 駐車場の隣に駐輪場があり、そこにしっかり停めて鍵をかける。田舎は治安が良いといっても、やっぱり心配は心配だ。 今の自分から自転車という道具を取り去ってしまうと何も残らない身のゆえに、自転車は大切にしよう。

 教会の中に入る。立派な祭壇が正面に際立つ。先ほどまで、ミサでも行っていたのであろうか、少し空気がどんよりとしている。 教会の中央に立って、真上を見上げる。見事となフレスコ画である。

 変なことを考える。若干、仏教的だが、死を迎える瞬間とは、このフレスコ画のようなものなのだろうか。 画には幾つかの場面が描かれている。その各々の場面で、恐らく宗教画のような構図で人が戯れている。さすがに見上げる人を意識してか、ほとんどの人が背中に羽をつけている。 一番高いところに描かれている絵は、女性が十字架を抱え、その情勢の背中には天使のような羽がついている。そのバックは、逆光風に太陽が見える。 人間の昇天とは、こういうものなのだろうか。  



 


教会を眺めながらのビール  

   時刻は、正午を回った。昼飯の時間だ。教会前に並んだお土産店で、どうもビールを売っているような気配を感じる。 お土産品店の中を、じっくりと眺めてみる。するとビール1.7ユーロ(約200円)と黒板に書かれている。

 今日は、自動車を運転しない。車などめったに通らない田舎道のポタリングだ。パン、パプリカと缶詰で、ビールを飲みながら昼食をとる。 天気もまあまあ、とても良い気分だ。

 駐車場に2台の観光バスが停まっている。そのうちの1台は、どうも日本人用の観光客が乗っている。あるいは中国人か。 「世界遺産」というレッテルが付くだけで、こんなにも人寄せができるものかと感心する。



 


雪の自転車道  

   ホテルに帰るには早すぎる。それに、最近は日の入りがドンドン遅くなり、何時までも外が明るい。Wies教会を訪問した後は、少し、山側を走ってみることにする。 教会自体の標高が800m程度だろうから、標高1000m程度の丘を走ることになる。

 自転車道は、荒れ始める。雪も、だんだんと深くなる。ついには、轍部分も雪に覆われるようになる。これでは走ることはできない。 MR4の細タイヤは、雪道には、からっきし弱い。

 自転車走行を諦めて、手押しで進む。するとタンデム自転車に乗った若いカップルとすれ違う。このカップルは自転車を停めて、早口のドイツ語で話しかけてきた。 私が怪訝そうな顔をしていると、タンデム自転車の後部座席でペダルを漕いでいた若い女性が、私に英語で話しかけてきた。
「この雪は、まだまだずっと続きますか?」
「あと数キロは、こんな感じだ。ただ、通行できない道ではないよ。」
 そのカップルは、ああそうと言うような顔をして、タンデム自転車を手押しで立ち去っていった。さすがに、3月下旬と言ってもヨーロッパアルプスは、まだまだ冬の真っ最中だ。



 


風が穏やかな日の走り  

  アルテノウ(Altenau)村に到着する。もう道端に雪は見えない。 アルテノウ(Altenau)村から、宿舎のあるバド・バイエルソイエン(Bad Bayersoien)村までお距離は約7kmだ。楽な距離だ。

 バド・バイエルソイエン(Bad Bayersoien)村を含めたバイエルン地域には、第四期氷河堆積物が造り出すモレーンの丘が多数ある。 周りとの高低差は、数十メートル程度だから、自転車での坂道の登りも、もそんなに苦労しない。このモレーンの丘の上からの眺めは良い。 ヨーロッパアルプスの山々の景色、また農村風景も眺めることができる。



 


カメラを担いでの夜の散歩  

   夕食後、見上げた空には、雲一つない。?群青色の空にオリオン座が浮かぶ。風もない良い夕暮れだ。

 カメラを担いで村を散歩する。時刻は、まだ午後7時を回ったばかりなのに道を歩く人はいない。今晩は、良い夜を迎えることができそうだ。