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日付: 2016年3月5日
場所: タヤタル国立公園_1(Thayatal) 下オーストリア州(Niederöstrreich) オーストリア(Austria) 
地域: 下オーストリア州(Niederöstrreich) オーストリア(Austria) 
訪問地: Retz, Hofern, Niederfladnitz, Merkersdorf, Hardegg, Merkersdorf, Ruine Kaja, Niederfladnitz, (Nationalpark Thayatal Radweg), Mitterretzbach, Retz, Hnanice(Czech Republic)


 


鉄道駅の駐車場に停める

   レッツ市(Retz)は、ウィーン市の北に位置する。 チェコとの国境までは、あと数キロだ。だいぶ北にきた。  ウィーンを7時過ぎに出発し、午前9時には、もう到着した。  

 まず、自動車で自転車を積んでサイクリングに出かける場合に、心がける重要なことは、どこに自動車を駐車するかである。 あまりに密集した市街地は駐車違反の恐れがある。逆に、辺鄙な山の中は、セキュイティ上の問題がある。  最近、好都合な場所を見つけた。鉄道駅の駐車場である。オーストリアの場合、 大体において、鉄道駅は市街地の外れに位置している。 そのおかげで、大体が数時間なら無料で停めておかれる。これは日本にはありえない素晴らしいことだ。  

 

 


 地方都市の活気  

   天気はまあまあだ。先週は、凍えるような寒さで精神を鍛える耐寒的な走りになった。 それを思えば、今日の空模様は数段良い。

 まずは自転車を引っ張って、駅から数百メートル離れた市中心部を訪れる。思うに、 フランスも、ここオーストリアも地方都市が元気だ。 それぞれの街が、そして村が人々の集まる場所として活気づいている。 それに比べて、日本の地方は元気がない。活気がない。不思議だ。なぜだろう。ぱっと考えても 理由が思い浮かばない。



 


国境にまたがる国立公園  

   タヤタル(Thayatal)国立公園は、オーストリアの北部に位置する。 国境を接するチェコ側では、ポディイ(Podyji)国立公園と呼ばれている。 この週末は、この国立公園を走る。  

 目指すはレッツ市(Retz)から20kmほど西に位置するハーデグ(Hardegg)の村だ。 その村までは、自転車道を走っていくことができる。 途中、レッツ市(Retz)の西の小高い丘に建つ風車小屋を尋ねる。  

 風車小屋の隣に一台のキャンピングカーが停まっていた。 一匹の犬が入り口扉の横に紐でつながれていた。 この犬はとても暇そうである。老犬らしくうろつきまわる足取りが少し重い。 ハイカーやジョギングを楽しむ人たちが風車の横を通ると、ワンワンと吠える。 一日、こんなことをして過ごしているのかなあと思う。時間がゆっくりと進んでいる。    

 

 


素晴らしい眺め  

 自転車道を西に進む。時折、自転車の専用道ではない道を走る。

 まだまだ森の景色は冬のままだ。その森を抜けると視界がぱっと開ける。なだらかな田園風景が目の前に広がる。 しかし、この景色は素晴らしい。おまけに、自動車がほとんど通らない。まさに景色の独占である。

 こんな中で自転車乗りを楽しめる今の自分は、幸せの頂点にいるのではないかと考える。



 


ハーディッグ城

   国立公園の中心地は、Thaya川が渓流となるハーディッグ村(Hardegg)から下流に向かって数キロだろう。 周りが高い崖に囲まれた渓流地帯である。

 ハーディッグ村(Hardegg)には、その村を見下ろす山の上にハーディッグ城が聳える。 築城で山は削られ、ほとんど原型を残さない。まさにこの村のシンボルだ。

 村の入り口で、見晴の良い場所に城と村を説明する看板が立てられている。 住民の88人が、もともと住んでいる人達で、142人が別荘として家を持っている人とのことだ。 こんな静かな村にセカンドハウスを持つとは、まさに羨ましい限りである。  



 


国境の橋  

   ハーディッグ村(Hardegg)の村外れにターヤ側を渡る橋がある。橋の向こう側はチェコ共和国だ。 こちら側がオーストリア共和国になる。 今は自由に橋を行き来できるが、面白いことに橋の管理は別々なようである。 川の真ん中が国境のようで、そこで鉄橋に塗られたペンキの色が変わっている。国境をジャストで 観察することができる。

 戦後、1990年の4月までこの国境は閉鎖されていたという。 オーストリア側の橋のたもとに石碑が建っており、その石碑に橋の通行が再開した日がつづられている。 またその手前10メートル前には、その時に記念植樹された木が一本たっている。 26年前のことだ。木は、人間が一抱えするほどの大木に育っている。  ほんのちょっと前のことのように思われるが、その時に生まれた子供が、今は26歳である。 大半の若者は当時のことは知らない。どんどん時が進み、現在は遠い昔になってしまう。 歳月人を待たず。世は無常だ。



 


  チェコ側の橋のたもとの花束  

   橋を渡って、チェコ共和国側に行ってみる。 恐らくチェコ国境警察の詰所であったであろう建物が改築中である。橋のとっつきの場所に 数束の花束が置かれている。

 誰が置いたであろか。まだ色を失っていない新鮮な花だ。 冷戦時代にこの橋の近くで命を失った人がいるのであろうか。無言だ。 土曜日の昼下がり、今と言う時間が過ぎ去っていく。



 


 国立公園内の廃城  

   メルケルスドルフ(Merkersdorf)の村から東の山の中に1〜2q入ると荒城がある。 10月から5月までは閉鎖で人影はない。まわりに人はいない。 それなりに雰囲気が出ている。こんな城に籠って、いろいろなことを考えてみたいものだと考える。

 時刻は午後2時。自転車を置いて国立公園の中に歩いていく十分な時間はない。残念だ。 また来よう。ぜったいに来て、この国立公園の渓谷を観たいものだ。



 国立公園自転車道  

   面白いもので、この国立公園の近くを走る自転車道に「タヤ国立公園自転車道」と名が与えらえている。 残念ながら国立公園そのものの中を自転車で走ることはできないが、その雰囲気は漂う。

 大分、日が長くなった。もう3月だ。 この森もあと1カ月で緑むせ返る季節を迎えると思うと今という時間が貴重に思えてくる。なぜだろう。