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日付: 2016年2月27日
場所: 寒くて寒くて震えが止まらない スターツの荒城(Staatzer Berg) スターツ村(Staatzer) 
地域: 下オーストリア州(Niederöstrreich) オーストリア(Austria)
訪問地: Staatz, Wultendorf, Hagendorf, (Radrad-vom schlossgeist zum Nimbeergeis), Laa an der Thaya, Neudorf bei Staatz, Staatz


 


平原にそびえる小山の上の荒城

 一泊二日の予定でウィーンを出発した。目指すは、ウィーン北方のチェコ共和国との国境地帯。 距離にして100qも離れていない。走るなら完全に日帰りエリアである。  

 最近、天気が安定しない。雨が続くと思えば晴れる。気ままな天気だ。 昨年もこんなものだっただろうかと考える。いくら自分で考えても、天気がどう変わるわけでもない。当然だ。  

 この頃、変な考えが頭を占めて困っている。それはこういうことだ。 浮世の諸々のことに心悩ませて、そして疲れ果てて何になるのだろう。 何か楽しいことでも身の上もたらされるものだろうか。 いっそのこと、木枯らし文次郎如く、「私には関係ないことだ」とうっちゃっておいた方が、心の平静に良いのではないかと思い始める。  

 小学生の子供たちが村の教会に集まってくる。土曜日、午前10時。 遊び盛りの子供のゴールデンタイムを奪い、お祈りさせるとは、宗教とはいったい何なのだろう。    

 

 


寒風の中を走る  

   スターツ(Staatz)は、城下町で村の中央に小高い丘がある。その丘の天辺に、崩れかけた荒城が建っている。 残骸しかないが、遠くから眺めると周りが平地なせいか、一際目立つ。そして壁だけ残されたお城が目立つ。  

 じっくりと観てみると、これは絵になる。丘の中腹に音楽学校がある。 その校舎の外壁に、この学校の歴史が絵にして描かれている。 1645年に大砲の攻撃を受けたこと。 1945年に第二次世界大戦の際にロシア軍の攻撃で、校舎が焼けたことなどが絵付で描かれている。 これはわかり易。

 寒い。久しぶりの冬の走りで防寒が甘かった。下半身は薄いパッチにタイツだけだ。これは良くなかった。せめて 厚手のパッチを履くべきだった。上半身は、幸いセーターを着て来た。これは幸いした。 ただ、風は強く、体感温度はかなり低い。おまけに太陽は薄雲に覆われたままだ。

 体が冷える。我慢できないくらいの寒さだ。



 


ウィーン近郊で最も美しい村  

   オーストリアの大概の村には、その村の入り口に看板が建ててある。 その看板には村の地図が張り出されている。  ブルテンドルフ(Wultendorf)にもその看板が建てられていた。 その看板に、1999年と2000年にウィーン近郊で最も美しい村に選ばれたとある。 また、付け足しで2000年以降、2度ほど下オーストリア州で最も美しい村になったとある。  

 これはすごい。下オーストリア州と言えば、百を超える村があるはずだ。その中で、 ナンバーワンならば、これはすごいことではないかと考える。人口は、たかだか100人〜200人程度の田舎の村なのに。 村に入る前に、若干、興味が沸く。  

 道路沿いを走って村に入る。 すると道路の左側に、倉庫らしい小屋がいくつも並んでいることを目にする。 何だろうと思う。住む家にしては、あまりに粗末だ。倉庫としては、ちょっとしっかりしている。  

 その中の一軒の家の前で、若い男が二人で、何やら、倉庫から取り出してトラックの後ろに詰め込んでいた。 その荷物をしっかりと見てみると、それはラベルを張っていない空のワインの瓶だった。 なるほど、これらの所狭しと並ぶ家々は、ワインの倉庫でもありセラーでもあるようだ。 それにしても、この家々の並びは美しい。全部で50棟はくだらないのではないだろうか。  

 村自体も、綺麗で美しい。「最も美しい村」の言葉にも納得できる。    

 

 


バス待合室で寒さを凌ぐ  

 体がとても冷えるのである。ブルテン村で、ゆっくりと写真を撮っていたせいだろうか。 身体が震えが止まらないほどである。

 こんなに寒いのなら、もう今日の走りを止めようかと思う気持ちが起きだす。 軟弱な考えだ。ただ、寒さで身を震わせて、なぜこうまでして走るのだろうかと自問する。 暖かいところで、休んでいた方が、よっぽど体に良いのではないかと考えだす。

 取りあえずは、風の来ない場所で、少し、休憩することにする。 腹に何かをいれようかと考える。

 バックから暖かいコヒーの入った水筒を取り出す。 オヤツ用に買い込んできたチョコレートを頬張りつつ、水筒から注いだコヒー入れたマグカップを胸に抱えて、ちびりちびりと飲む。 インスタントのコヒーなのに、何ともおいしいものだとつくづく思う。



 


どこまでも続く平坦地

   温かいコヒーで元気が出る。北に向かって走り始める。 延々と平坦地が続く。チェコとの国境まで、もう10qもない。 追い風を受けて、ドンドンと自転車は進む。

   こういう寒い日は、向かい風の中を、大腿四頭筋をガンガン使って筋肉から 熱を発生させることに尽きる。が、残念ながら追い風ではそれができない。 これは残念だ。

 この自転車道は、シュロスゲートからニンバーガイスの自転車道(vom schlossgeist zum Nimbeergeis)で全長は40q程度とのことだ。 ただ、平坦地に作った能面道路であり、幸い舗装はされているが、あまりに平坦すぎて 単調だ。走っていると飽きがくる。



 


国境の街  

   正午にはオーストリアとチェコとの国境の街であるラー(Laa an der Thala)に到着した。 人口6000人のこの街は、街の中央にゴシック建築の市庁舎が目立つ。 第一時世界大戦後にチェコとの国境が街の北に引かれ、その後、鉄のカーテンとなった。

 この街には今晩、宿泊する。それで明日、ゆっくりできるだろうと思い、時間的にも余裕があるので、オーストリア側の村を散歩してみることにする。 西に向かって走り始める。  すぐに田園地帯の中を走る。

 どうもあまりの平坦地は、単調で面白くない。 風景を写真に撮ろうとするが、どこも同じ風景になる。

 空を覆う雲も、気のせいか薄くなってきたいるようだ。時折、薄雲の間から日が射す。 自分の影が地面に映し出されるほどに天気は回復してきているようだ。これは期待できる。



 


  午後2時に今日の走りは終わり  

   寒い中の走りは、やはり辛い。 そうそうに走りを切り上げて、自動車が停めてあるスターツ(staatz)の街まで帰ってきた。 そして自動車でスターツ(staatz)からラー(Laa an der Thala)まで移動する。

 ホテルには午後5時頃に行くと伝えてある。2時間程、余裕ができた。 車の中に2時間も籠っているのは、何か脳がない。 であればと思い、自動車を市庁舎前の駐車場に停めて、市庁舎広場に面したカフェに入る。 少し、暖かいところで体を温めたいのである。



 


  満員の喫茶店  

   市庁舎前のカフェには、10席程のテーブルがあった。 どの席も土曜日の昼下がりを過ごす人たちで一杯だ。空席を見つけ座る。 メイドが注文を取りにくる。コヒーとクロワッサンを注文する。これはいつものパターンだ。 カフェといっても、実際のところは、パン屋さん兼のカフェであり、大体はパンが美味しいのである。  壁にいくらかの風景画や静物を描いた絵がかけられている。商魂たくましいもので、 そのどれにも値札が付いている。60ユーロから100ユーロだ。 高いというか安いというかだが、まあ気に入ったら、このぐらいの値段なら買うお客もなかにはいうだろう。



 


  夜の街を散歩  

   ホテルには、ワインとおつまみを持ち込んで一人酒だ。旅先でだけ行う楽しみだ。 7時過ぎ、テレビを観るのも飽きる。カメラを持って、外を散歩したくなる。 部屋の中は暖房がバンバン効いているので、それに連れられて外に出る意欲がわいてきた。

 昼間観た絢爛きらびやかな市庁舎は、うまくライトアップされていた。 白い光線で下から照らし出された窓が、とても幻想的に映る。これは良いものを観たと思う。



 


  誰もいない街  

   昼間は、あんなに多くの人が街を歩いていたのに、午後8時を過ぎた街には人っ子ひとりいない。 当然ながら店と言う店は、全部閉まっている。冬の国境の街の夜は寂しい。