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日付: 2016年1月16日
場所: ヘーレンシュタイン(Höllenstein 標高645m) 
地域: ギースヒューブル村(Gießhübl)オーストリア(Austria)
訪問地:  

Gießhübl,Höllenstein(645m), Gießhübl


 


寒波の襲来

 年明け後、急に冷え込みが強くなった。くしゃみが出始め、あれれ、風邪でもひいてしまったものかと考えた。しばらくすると 暖かな日々が続くようになった。これで走れるかなと思ったが、深い霧がウィーン市内を覆う暗い日々が続いた。  

 フランス・パリの冬、それを過去6回経験している。それで大方、欧州の冬は、こんなものだとわかっているつもりだった。ところが、 ここ中欧のウィーンは、内陸に位置する都市だ。冬の寒さは厳しい。暖かければ霧が街を覆う。たまに空が晴れ渡れば風が強い日になる。 なんとも自転車好きの人間にとっては、冬のウィーンは面白くない。  

 最近、外には出ずに、アパートの部屋の中でウジウジしている。夜明けは遅い。暗くなるのも早い。外は寒い。なんともやりきれない。  

 体はなまるばかりだからと、重い腰を上げて、ウィーンの森までやってきた。自動車で30分。市内には雪は積もっていなかったが、 ここは白銀の世界だ。  

 

 


今年初めてのアイゼン装着  

   さっさと出発準備を済ませる。歩き始める。しばらくは舗装道路が続く。ちょっとした坂を登りきると舗装道路は切れて砂利道となる。 数センチの新雪が積もっている。ときおり、空から切片も落ちて来る。まさに冬の山歩きだ。

 せっかくアイゼンを持ってきたのだからと、砂利道が始まるとともに、靴に装着する。若干、歩きにくくはなるが、まあこれはしょうがない。  



 


山道で出会う人々  

   天気は今一つ、そして雪も降っている。どんな人々が、この季節、山歩きをするのだろうかと、若干の興味もある。 少し観察してみる。  

 まずはジョギングを楽しむ人たち。大体は、男女ペアで走っている。この雪の中を走る人達なので、脚には自信を持っている人達のようだ。 タイツを通して見えるフクラハギの充実さには感心する。  

 次は自転車乗りだ。実は、うらやましいのである。この人達の元気が。私もやりたいのである。 タイヤ幅が大きなマウンテンバイクで、くっきりと明瞭なわだちを残して、彼らは走り去っていく。彼らは、だいたいはソロで走っている。  

 最後は散歩人だ。イヌを連れて散策する人々を多く見かける。「イヌには縄を」との標識を見かけるが、誰も、そんな決まりは守っていない。 ところで、この寒い中、犬は、当然のことながら裸で歩いている。ほんとうに彼らの健康は、ほんとに大丈夫なのかと心配してしまう。    

 

 


頂上の茶屋が視界に  

 このヘーレンシュタイン山の訪問は2度目だ。 昨年の冬も、アイゼンを履いてきたことがある。

 人間の記憶とは、ほんとうに不思議なものだ。道を歩くとともに1年前の記憶が蘇ってくる。 この茂みを抜けると広い原っぱに出る。あるいは、このちょっとした登坂の向こうには、茶屋が左側に一軒ある。など、 蘇ってくる記憶を再確認するのが、楽しくなるほどだ。これは、結構、脳細胞の刺激には良いように思う。

 一時間程歩くと、山頂の茶屋の姿が見え始める。とっつきの両脇の木々が伐採されている。昨年は、確か、鬱蒼としげっていたのにと 考え始める。ただ、切り株は、結構、年期が入っているので、最近、切られたようには見えない。記憶の混乱が起きる。  



 


寂しい山頂の茶屋

   この季節にお店やっているのあかなと、半信半疑で店に近づく。自動車の轍もついているし、玄関辺りには、足跡も見られる。 どことなく店内に人の気配もする。

 扉を開けて店の中へ。部屋の中は、十分に暖かく、とても綺麗だ。これは街中のカフェと変わらない。 店の中には、2人一組のお客がビールジョッキーをテーブルに置いて、談笑していた。往路に私を追い抜いていった犬連の 散歩客だ。かなり常連らしく、お店の主人と親しそうに話をしていた。



 


広い部屋に私一人  

   私は、別室に移り、荷物を降ろして椅子に座った。すぐに、マスターが来て、何をお望みですかと私に尋ねる。 ビールを飲みたいが、自動車を運転する身。それは止めておく。代わりに、カプチーノと一つをお願いした。

 注文品を持ってきてくれたのは、若い女性だった。どうも、このお店の経営は家族で行っているようだ。40才位に見える旦那さんとその奥さん、 そして中学生くらいの男の子と女の子が店で働いているように思える。

 広い店の中。どうだろうか、この一室に、30人余は入れそうな様相だ。そのお店の中に、私一人、そして注文品が入ったコヒーカップ が一つポツンと存在する。部屋の隅には、暖炉がある。奥さんらしき女性が、その暖炉の火加減を見に、入ってきた。

 気持ちが落ち着く。ずっとこの部屋の中にいたいものだと感じる。



 


  帰り道、スッテンころりんと転倒  

   山頂の茶屋を後にする。午前中は、時折、いくらかの雪片が風に吹かれて飛んでいたが、今は、それはない。 山頂近くの急坂を下ると、道は緩い下り坂になった。

 この雪なら、アイゼンなどなくても歩けるのではないかと思い始める。試しに、アイゼンを外して歩いてみた。 幸いに道路上の雪は、そんなに踏み固められていない。時折、滑るが、歩けないほどではない。

 いい気になって威勢よく歩き始める。とたんに、脚が滑って、バランスを失って尻もちを着く。両腕で、 若干の受け身の体制を取ったが、お尻を強く地面に打つつける。かなりの痛みを感じたが、ひどいものではなかった。これなら 大丈夫だと思う。まさに油断は禁物である。



 


駐車場は有料  

   午後1時前には、駐車場に帰ってきた。朝、料金を払う時には6時間3ユーロと思ったが、どうも、駐車券を 良く見ると3ユーロで2時間だったようだ。とっくに、規定時間は過ぎていたが、なんともなかったようだ。  



 


 市内の降雪はなし  

   ウィーンの森は夕べの新雪で白くなっていたが、市内の降雪はなかったようだ。 冬の弱い日差しが雲間から射す。まだまだ暖かな春は遠いと感じる。