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日付: 2015年11月7日
場所: フェイストリッツ峠(Feistritzsattel 標高1,298m)
地域: 下オーストリア州(Niederöstrreich) オーストリア(Austria)
訪問地: Gloggnitz(442m), Wartenstein, Otterthal(632m), Feistritzsattel(1298m), Otterthal(632m), Kirchberg am Wechsel(581m), Ramssattel(823m), Krainichberg, Gloggnitz(442m),


 


鉄道のP+Rに駐車

 午前7時にアパートを出発。一路、高速2号で60km程南下する。 そこから、S6道に入って15km。グログニッツ(Gloggnitz)という町に到着する。 この夏にジメリング鉄道沿いを走った時に立ち寄ったことがある街だ。  

 最近は、自動車の駐車場には気を配る。10月に2度程、続けて駐車違反をして懲りた。 今回は、安全そうな場所を見つけてしっかりと停めた。  

 

 


 森の中へ  

   まず、昼食の調達のためにグログニッツ(Gloggnitz)の街でパン屋さんを探す。 パン屋さんは、街の中心にあった。何んと、肉屋さんとパン屋さんが同じ建物に入った。ハイブリッド型のお店だった。

 慣れなにドイツ語で、クロワッサン1つと名前を知らないパンを一つ、それにズメルパンを一つ買う。これで 400円だ。    



 


登り始め  

   ウィーンの南西に広がる山々は、基本的に、北東−南西の地質構造だ。 ウィーンの南約50kmにあるノイシュタット(Neustadt)から南西に延びる谷は、延々と150km程続く。 この谷を挟んで、北側には石灰岩からなるラックスやシュネーベルグの山々、南側には砂岩などからなる傾斜の緩やかな山々が連なる。  

 今日は、このなだらかな山々が連なる山地を走る。道路が作りやすいのか、立派な道路が至る所にある。 標高442mのグルニッツ(Gloggnitz)の街から、まずは標高約800mの峠越えだ。高低差400m程度の登りであれば、 少しガマンすれば、登り切れると思い、ひたすらペダルを漕ぐ。山々の深緑の針葉樹に混じって、 黄色に葉色を変えた落葉樹が晩秋を思い出させる。どこか、日本を走っている錯覚に襲われる。  

 

 


 バルテンシュタインの館の前で休憩  

 ウィキペヂアによれば、バルテンシュタイン(Wartenstein)の館は、12世紀に初めて文献に現れるとのことだ。 900年もの歴史を持つ館で、色々な人の所有を経て、今は私有されているので見学はできない。残念だ。

 館の外壁に蔦が生える。壁を伝う蔦の葉の紅葉は色あせてしまっている。そこになぜかベンチが置かれている。 時刻は午前10時を過ぎた。ちょっと一息ということで、ここに座って先ほど買ったパンとコヒーを飲む。天気が今一つなのが残念だ。



 


峠を越えるとなだらかな下り坂

   標高約800mの小さな村を過ぎるとなだらかな下り坂になる。ここは自転車乗りの醍醐味が楽しむことができる。

 思うに、自転車とは面白い乗り物だ。人力を頼りにするから、当然と言えば当然だが、登り道の速度と下り道の速度が こんなにも違う乗り物も珍しい。上りは、せいぜい時速5km〜10km程度だろう。これが下りになると時速50kmで走る。登っている途中の サイクリストは皆が苦しそうだ。ところが、下りは涼しい顔をして降りていく。

 オタータル(Otterthal)からは西に延びるサイクリング道路に合流する。ここの標高は632m、ここから1298mまでの峠を目指す。 標高差650mの走りだ。  



 


何んとも美しい風景だ   

   サイクリング道を西に向かって走る。 次第に高度はあがるが、少しづつなので悪戦苦闘はしない。途中、農家の横に立つ白樺並木が目に入。

 ちょうど今が、紅葉の旬なのだろう。何んとも言えないこの静かな風景には、しばし見とれた。



 


  とても静かな峠に到着  

   時刻は午後12時半。やっとのことで峠に着いた。 標高は地図では1,298mだが標識は1.290mだ。ヨーロッパは、こういうところは大らかで、誰一人、やれ高さが地図と違うぞ というようなことは言わないようだ。まあ、言ったとしても、誰も相手にされないだろうが。「どれで何なの」と言われて御終いだ。  

 ここでちょっと遅い昼食を摂る。パンとオレンジ一個の粗末な昼食だ。食べながら周囲を見回す。すると、一つの看板を見つける。 どうもここは、かっての木材の集積地だったようで、昔はここからさらに高地に向かって、森林鉄道が伸びていたとのことだ。

 昔の写真が展示されていたが、ここで厳つい顔をしている労働者達は、一つの時代を生きて、そして今はこの世にいない。 どことなく世の定めとは言え、はかない。



 


日差しが戻る  

   峠(1,298m)から下界の標高500m地点までは、あっという間の移動だった。後輪が、かなりすり減っているので、若干、 オドオドしての下りである。空気も高地とは異なり、どことなく、暖かな気もする。気のせいだろう。

 農家は、牧草用の手入れで忙しい。冬に備えてのことだろう。何か、黒いものを水に溶かして畑にまいている。牛の糞だろうか。 よくわからない。ただ、つーんと鼻をつくにおいがどからか漂ってくる。これはあまり良い臭いではないなあ。



 


使われなくなったホテル  

   さて、時刻は午後2時を過ぎた。自動車を駐車してある場所まで帰らなくてはいけない。それには再度標高が800mの峠を越えなければならない。 同じ道を帰っても面白くないと思う。ちょっと遠回りになるが、峠の標高が823mのラムス峠を登ってみることにする。

 峠への道は、いろは坂のようにクネクネと曲がる。根気よく一ペダルごとに確認しながら上がっていく。要は、一歩一歩ではないが、とにかく ペダルを漕がないと峠には到着しないのである。

 標高差300m程度の坂ならば、少しのガマンですむ。それを自分に言い聞かせて頑張る。やがて峠に到着する。峠には茶屋がある。あまりに も多くの人がいる。興ざめだ。

 峠から下り始める。しばらく走る。すると倒産してしまったらしい、廃墟のホテルに着く。道を覆うように門が作られている。これはすごい。 営業をやめてそんなに時間は経っていないようだ。どことなくひとっけもする。実は、廃城や廃ホテルなど、「廃」が付くものが好きなのである。 「廃」は、何か人間の過剰な欲望の行きつく先のようだ。



 


快適な下り  

   オーストリアという国は美しい国であり素晴らしい国だ。晩秋の頃、こんな立派な道を、私一人の独占状態でサイクリングを楽しめる。

 誰に感謝すればよいのだろうか。