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日付: 2015年6月4日
場所: クロスターワッペン(Klosterwappen:標高 2,076m)
地域:  オーストリア(Austria) 下オーストリア州(Niederösterreich) 
訪問地: Puchberg, Hinter Faden, Edelweisshütte, Kaiserstein(2061m), Klosterwappen(2076m), Waxreigel(1888m), Bergbahnhof, Schneebergbahn(train), Puchberg


 


絶好の登山日和

 ここ数日、晴れが続いている。欧州の6月は天候が安定すると言われているが、まさにそのとおりだ。クロスターワペン山(Klosterwappen:2076m)は、下オーストリア州で最高峰である。冬の頃から、夏になったら登ろうと心に決めていた。その日が来た。

 午前5時に起床し、アパートを午前5時半には出発した。アパートの窓から外を眺める。今から登るクロスターワペン山(Klosterwappen:2076m)がうっすらとモヤがかかっているものの、その山体が見える。今日は、快晴の気配が濃厚だ。  

 

 


しだいしだに目的の山が近づく  

   車をプッチベルグ(Puchberg:585m)の町に置く。そこから出発だ。時刻は午前7時だ。今から標高差にして、1500mを登りきる。結構なハードな登りが予想される。

 しかし綺麗な山だ。屏風を開いたように、山体をプッチベルグ(Puchberg)の町に晒している。山に近づくにつれ、写真のフレームに山体全体が入らなくなる。近づいている証拠だ。



 


 急な登りで一発目のパンチ  

   ヒンテルン・ファーデンの村に着く。時刻は午前9時を回ったところ。ここから本格的な登りが始まる。ここに来るまで知らなかったが、クロスターワペン山(Klosterwappen)を北から登るルートは、この村に車を停めて、ここから登っていくようだ。

 スキー場のリフト下の山道を登る。結構な傾斜の道が延々と続く。天気が良いせいか、人出も多い。思うに、こちらの人は、靴はしっかりと登山靴を履いているが、上着は半そでシャツが多い。日焼けは大丈夫だろうかと心配してしまう。  

 

 


見上げる岩体の圧迫感に、脚がすくむ  

   標高1,235mの山小屋に到着。そこから、森に入る。山道は、ほとんど手入れされていないようだ。岩がごろごろと転がる道を、ひたすら登る。汗が、滴り落ちる。

 森を抜ける。そこから上は、岩場だ。山肌を見上げる。岩塊に圧倒される。今から、あの山に入っていくかと思うとぞっとする。大丈夫かいなと自問する。前を行く人々、後に続く人々の姿格好を見る限り、山登りに慣れた人のような体形ではない。ここで引き返しては後悔すると自分に言い聞かせて一歩一歩の足を進める。



 


危険な岩場が続く

   標高が高くなるにつれ、岩場の登りが険しくなる。鎖路は続く。足場に転がる石が浮石であることも気になる。慎重に、そして慎重に登っていく。思うに、年齢とともにバランス感覚も衰えていくことを感じる。老人が、なぜ、杖をつくのか、その理由が少しずつわかり始めた。

 標高1700m辺りは、まさに手を使っての岩登りだ。足場の安定を確認しつつ、手で支える岩の安定度を観ながら登り続ける。日本では、正直、経験したことのない、岩登りだ。



 


犬を連れたオッサンにビックリ  

   いわばを登りきると、山頂近くの緩い登りになる。皆、ここに到着すると安心するようで、一服する場所でもある。私もここで、一服する。

 岩に腰かけて、コヒーを飲む。すると一匹の犬を連れた登山者が私の前を通りすぎた。あの岩場を登ってきた犬には驚きだ。さすがに先祖がオオカミなのだろうか。それにしても驚きだ。逆に、犬を連れた登山者の方が、息をゼイゼイさせて急傾斜の登りが終わったことに安心しているようだった。



 


 先は長い、一歩一歩進む  

   急傾斜の岩登りが終わっても、なだらかな登りが延々と続く。目の前に、最高地点と思われる峰が見える。一歩一歩、歩みを進める。

 地層の傾斜と、最終氷河の削りのためだろうか。遠く東の方に見られる山々は、皆が皆、頂上辺りでは平地が続く。今歩いている山もそのとおりだ。しかし、歩いている道のちょっと先には、千メートル近い落差の崖があるかと思うと、不思議な気持ちになる。



 


 まずは一つ目のピーク  

   標高2061mのカイザースタイン(Kaiserstein)の峰に着く。ほんの数メートル先は絶壁だ。足がすくむ。記念撮影をする。人が少ないのも、危険だからなのだろうか。  

 このピークから360度のパノラマが広がる。ウィーンの街を見えているはずだ。ここから直線で約65km離れているとのことだ。残念ながら、遠方は靄がかかってウィーンの街を確認できない。おなじみのDCタワー(オーストリアで一番高いビル)も見えない。残念だ。



 


 最高峰は、さらに先  

   クロスターワペン山(Klosterwappen:2076m)は、この先にある。見た感じカイザースタイン山(Kaiserstein)の方が、高いように思えるが、ほんの少しだけ、クロスターワペン山の方が高いようだ。   

 クロスターワペン山(Klosterwappen:2076m)に向かって歩く。ここで、あることに気付いた。他の登山客が、えらく軽装なのである。一応、しっかりした靴を履いてはいるが、あまりに子供が多い。よくよく調べてみると、なんと標高1800mまで、山岳鉄道でこられるとのことだ。シェネーベルグ鉄道(Schneebergbahn)の存在を、山頂に来るまで知らなかった。



 


下山も険し  

   山頂で食事を済ませ、下り始める。午前中のハードな登りで、脚にかなり疲れがたまったようだ。下りをどうしようかと思う。来た登山道を引き返す。これは、あの岩場を下ると思うとぞっとするので、すぐに除外。次に、鉄道電車沿いの山道を下る。これも良いが、今から3時間近く、歩き続けるかと思うと、気力が萎える。結局、シェネーベルグ鉄道(Schneebergbahn)で降りることにする。一番、楽な方法だ。

 下りは、集中力を要する。転倒の危険性が大きい。一歩一歩、確認しながら下る。時間は、午後1時近くになった。下山する人も多い。これだけ天気が良いと、下山してしまうのが勿体ない感じだ。



 


山岳鉄道で下界まで  

   シェネーベルグ鉄道(Schneebergbahn)は、標高1800mから標高585mまでの下りを時速12kmで走る。要する時間は40分程度だ。19世紀の終わりから営業をしているという。もう100年以上の歴史がある山岳鉄道だ。

 下界は、真夏だ。とても暑い。気温は摂氏30度を超えているのではなかろうか。日差しも猛烈に強い。下山に山岳鉄道を使ったことに、若干の後味の悪さを感じたが、天候に恵まれたことに感謝しよう。