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日付: 2015年3月28日
場所: ドナウ川の旅 (メルク−ブァルシェ:Melk-Wallsee) オーストリア(Austria) 下オーストリア州(Niederösterreich) 
訪問地: Wien-Melk(train), Weitenegg, klein-Pöchlarn, Marback an der Donau, Gottsdorf, Weins, Grein, Wallsee


 


夜明け前の旅立ち

 最近、夜明けが早くなった。と言っても、午前5時半の駅は、まだまだ暗い。 土曜日の早朝、地下鉄に乗る人などいるわけないと思う。ところが、結構な人が電車の 中にいる。皆、お互いに話すこともなく、静かに、目的駅に電車が到着するのを待つ。  

 鉄道を利用する。近郊電車以外の長距離電車に乗るのは初めてだ。  目指すは、メルク(Melk)の街だ。係員に自転車利用の方法について尋ねる。 長距離電車は、専用のワゴンに自転車を載せなければ乗れない。「駅のセンターで 予約しろ」と係員に言われる。何とか、予約するが、結構、手こずった。 また、恥ずかしい話だが、オーストリアにはÖBB(オーストリア鉄道)以外に、 鉄道会社があることも知った。  

    

 

 


 さあ、走り始め。  

   自転車専用のワゴンは、20号車だった。そのワゴンの中に、自転車を括り付けていると 係員が話しかけてきた。「予約券はあるか?」。予約券を見せると、今度は、「切符はどこだ」 と尋ねられた。切符を見せると、「よし」と言って、検札印を押してくれた。結構、 面倒くさい。

 思うに、輪行袋を持ってくるべきだった。そうすれば、エキストラの料金、片道で500円 を払わずに済んだ。そして、簡単に電車に乗られた。

 サンクト・ポールタン(St Pölten)の駅で乗り換えた。駅員はとても親切だった。 私がメルク(Melk)まで行きたいのを覚えていて、「お前の電車は、7番線だ」。すぐにそこに 行きなさいと親切に教えてくれた。

 

 


春の訪れ  

     まだまだ寒い日が続く。ただ、朝方の冷え込みに比べて、日中は暖かい。 日々、木々の新芽が大きくなっていくのが目につく。これを、眺めているのが楽しい。  電車から眺めていて気が付いた。自分のアパートの窓からも見える。黄色い花びらを つけた木々がいたるところに見える。もう春近しだ。この週末で、冬時間から夏時間に 移行する。季節はどんどんと過ぎていく。

 あいにくの天気だ。ただ、雨粒がそらから落ちてこないのが良い。 自転車は快調だ。地球のこんな場所で、サイクリングを楽しんでいる自分は、なんと 幸せな人間だと思う。

 

 


   道端の掃除に励む人々  

     荒城がドナウ川沿いの土手から見えた。行ってみようと思う。どうも 城には登れないようだ。「国破れて山河あり」。荒城を眺めるのが好きだ。  

 このお城のまわりを走っていると、不思議な光景を目にした。なんと、 子供たちが大人たちに混じって、道沿いに捨てられたゴミ拾いを行っていた。 大きなビニールの袋を持って、目立つ服装をして、黙々と楽しそうにゴミ拾いをしていた。  日本では、町内会の掃除等でよく目にする風景だ。ところが、欧州でこのような 集団でゴミ拾いをする人達に出会ったのは初めてだ。さすがに、オーストリアはすごい国だ。  



 


ドナウ川沿いの港で昼食  

   ある意味、川沿いの土手道を走ることは、退屈だ。その退屈さが、心地よいから、 こうしてサイクリングを続けている。

 マルバック(Marback an der Donau)の街に着く。ここには立派な港がある。 夏は、保養所になるらしく、街にはホテルやレストランが多く軒を連ねている。

 時間は、正午前だ。朝食が早かったせいか、空腹を感じる。港を眺めることができる ベンチを見つける。ここで、昼食をとることにする。  カモが2匹、並んで水面にいる。この2匹のカモは、私が、ベンチに座ったのを見届けると 私の方に泳いできた。すると、びっくりしたことに、この2匹は、水面から上がって 私のベンチの方に歩いてきた。これにはびっくりした。ずいぶんと人慣れしている。  多くの人が、餌を与えているのだろう。

 

 


 田園の中を走る  

   ドナウ川は、ゴッツドルフ(Gottsdorf)村あたりで大きく蛇行する。自転車道は、 しばらくドナウ川沿いを離れて、田園風景の中を走る。緑の牧草畑が広がる田園だ。    

 どこからか、牛の臭いが漂ってくる。でも牛舎は見当たらない。 自転車をこぎ続ける。小さな村に入る。やっとのことで牛舎を見つける。 なんと、十匹近い牛が、その建物の中にいた。すべて、肉牛だ。 それらが、一同に私の方を眺めた。自転車に乗りながらの瞬間だが、視線が合う。  のどかだ。  



 


 洪水の記憶  

   ドナウ川の洪水の歴史を示すモニュメントを見つける。なんと16世紀には、数メートル に達する洪水があったようだ。これではすべてが流されてしまう。当時は、 洪水予報などなかった時代であるから、多くの被害が生じたのだろう。  



 


 グレインの街にも洪水の歴史  

   グレイン(Grein)の街に到着する。この街で、今夜の食料を調達する。 民宿に泊まるが夕食のサービスがない。外にはレストランはなさそうだ。 であれば、ここで酒といくらかの食べ物を買っていくことにする。ちょっと、 リュックが重くなるが我慢だ。

 さて、教会の裏手の道沿いに、またまたドナウ川の洪水の跡をしめる標識を見つける。 この高さまで、水が押し寄せてきたよという印だ。  その高さに驚く。これでは、すべてが、流されてしまう。まさに、ドナウ川は生き物だ。

 

 


 残り18kmの距離に苦労  

   食料の調達を終えてグレイン(Grein)の街を出発する。道の表示だと、 今日の宿泊地のバルセー(Wallsee)まで、18kmとのことだ。この数字を見て 一瞬、ひるむ。まだ18kmもあるのかと思う。時間は午後3時を過ぎた。 脚が悲鳴を上げ始めた。  

 西の空の雲間から、西日が差し始めた。緑の牧草が光を受けて、美しく輝く。 みごとな午後の昼下がりだ。  どこからか、迷い犬が一匹、私の自転車の横を走り始めた。その仕草を見ていると 飼い主から逸れてしまったようだ。この犬、その後、どうなってしまっただろか心配だ。  



 


 民宿に到着  

   午後、5時過ぎに民宿に到着した。どうも、私の予約を知らなかったようだ。 カタコトのドイツ語で、何とか説明する。相手は理解してくれた。  

 熱いシャワーを浴びる。調達したビールを飲み始める。 疲れがドッと出る。テレビを見る。時折、記憶が跳び始める。夢うつつになる。 そして知らぬ間に深い眠りに落ちた。