home

日付:2011年8月24日
場所:  国道A9 の道脇  ( Layby 9 of the A9 ) (Scotland highland)

訪問地:  Paris, Edinburgh


 野宿は辛い 

 パリ発エジンバラ行の飛行機は、午後9時過ぎに空港に着いた。
 すぐに予約してあったレンタカーを借りて、スコットランドのハイランド地域に向かう。当初の予定では、夜通しで、北へ走るつもりだった。
 ところが、驚いたことに道路状況がすこぶる良い。エジンバラ空港からパース(Perth)まで1時間で走ってしまう。

 パース(Perth)の街を過ぎて、自動車専用道路M90から国道A9に入るも、速度制限60マイル(90km)のしかりした道が続いた。
 これでは、目的地に早く着きすぎてしまう。これは良くないと思い、道端で休むことにした。休むというか、明るくなるのを待つことにした。時刻は、午前0時ちょっと前だった。

 車一台で路肩に停まっていると襲われる危険性があるので、たまたま大型トラックが仮眠のために停まっている場所があった。これは良さそうな場所だと思い、そのトラックの横に、ちょこんと車を停めて仮眠することにした。
 車の中の仮眠は辛い。後部座席に丸くなって眠ろうとするが、車の中は意外に狭い。眠れない。おまけに8月末のスコットランドの夜更けは冷える。摂氏10度を下回っていることだろう。

 車をアイドリングして暖房を入れれば良いだろうが、ガス中毒を起こしそうで怖い。
 結局、時々起きて、エンジンをかけて暖房を入れ、しばらくしたらエンジンを止めるようにした。

 眠れずに、夜は過ぎていく。2時、3時と時計の針は回っていく。空には無数の星が輝いている。車の窓を通してそれが見える。
 うつらうつらする。すると、寒さで起こされる。その繰り返しだ。
 もう若くないなあとつくづく思う。そういえば、パリの空港でのパスポートチェックの際に手間取った。頭が薄くなったせいか、パスポート写真との照合の際に、右を向け、左を向けと命令された。こんなの初めてだ。ショックである。

 数十年たったら、この世とオサラバだ。皆そうだ。どうせ永遠の命などこの世にない。残り時間が長いか短いかの問題だ。じたばたしても仕方がない。
 こうして1時間の積み重ねが、1日になり1年になる。世代が変わり、次ぎの世代が出現し、そして消えていく。同じ運命をたどる。生命誕生以来、35億年の繰り返しである。

 午前4時半、空が少し明るくなり始めた。周りの木々のバックグランドの色が変わり始めた。「夜が白む」とは、よく言ったものだ。
 そうこうしているうちに、隣に停めたあったトラックがエンジンをかけて、出発していった。ひとり、スコットランドの台地に残された。