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日付:2011年3月6日
場所: ユタ・ビーチ (マンシュ県:50)
訪問地: Carentan, Utha Beach, Saint-Martin-de-Varreville, Sainte-Mére-Eglise, Blosville, Houesville, Saint-Côme-Mont, Carentan


 親切なお姉さんがいるホテル

ホテルの名前は、ルボーバン(Le Bauban)。キャランタンの街の中心にある。一泊39ユーロ(約4000円)の安宿だ。 昨夜、泊っていたのは、私ともう一組だけだ。完全にシーズンオフである。
 受付の女性は、30歳前後の、比較的綺麗なお姉さんだった。  出発前に朝食を食べていたら、暇なのだろうか、とにかく、このお姉さんが話かけてくるのである。 「パリに住んでいるのか」 「自転車で、昨日はどこへ行った。今日は、どこへ行く」 「このホテルのHPを観たか。私が撮った写真が載せてある」など、ゆっくり食事をしている暇もないほど、よく喋る。 自転車道案内のリーフレットを、どこで見つけたのか、1つくれた。
昨日より、風が強くて、今日は自転車の旅は辛いだろうが、頑張ってね。と、見送ってくれた。

 風が冷たく、寒々しいノルマンディーの海岸

 案の定、海岸は、風が強かった。しかも、冷たい風が吹き荒れていた。冬の日本海を思わせる景色である。 波の華も、風で舞っている。
 この寒い中を、手袋もせずに、自転車を漕いでいるせいか、寒さで指が痛い。持ってこなかったことをつくずく悔やむ。

 二匹のロバの会話  

「この寒い中を、この人、何やっているのでしょうねえ。」
「いやあ、自転車に乗っているらしいけで、本当に楽しいのかなあ。」
「いい年齢こいて、元気があるなあ。僕らも、見習わないと、いけないよね。」

 兵どもの夢の跡  

   1944年6月6日、この海岸に連合軍が上陸した。今から、67年前である。 この海岸には、至る所に戦争の跡が残っている。当時、20歳であった青年は、今は、87歳である。
 時は過ぎて、平和な世の中になり、外国人が自由にサイクリングできる時代が来た。

映画に出てきた教会  

 連合軍のノルマンディー上陸を題材にした「世界最大の作戦」という有名な映画がある。 私も、この映画は観た。映画の中で、落下傘部隊の隊員が、教会の鐘に引っかかって、 下で繰り広げられる殺戮を観るシーンがある。私は、この話は、実話ではないと思っていた。
 ところが、サントメールエグリーズにあるこの教会を見て、これが実話であることを知った。 実際、教会の鐘の所に、パラシュートと人形が飾ってある。
 教会の隣に、落下傘部隊の博物館がある。中に、入って、ゆっくりとその時代にあった戦争のことを知った。
 1944年から1948年までに、6000人の米国の青年が戦死したとのことである。
 博物館から出たら、空は、晴れ渡っていた。空の青に、教会の鐘塔が映える。

「お迎え」は、こんな感じかな  

 午後5時には、キャランタン(Carentan)に帰ってきた。朝から、よく走った。クタクタに疲れた。心地よい疲れだ。
とりあえず、恒例になった駅前のカフェでビールによる水分補給を済ます。
 ビールを飲みながら、変なことを考えた。何年か後に必ず来る「お迎え」は、こんな感じなのだろうか。十分、生きた。 そして、疲れた。全ての記憶を忘れて、自分自身の事も忘れて、電車に乗るだけ。19時16分の電車に乗るだけ。