home

日付:2010年8月14日
場所: Evecquement (Val d'oise:95)
訪問地: Conflans-Sainte-Honorine, Andresy, Triel-sur-Seine, Evecquement, Meulan


  次は、セーヌ川沿い散策だ

 先週の走りでイル・ド・フランス一周の旅に一区切りがついた。 次は、まずはセーヌ川の下流方向に沿って、走ってみることにした。 極力、ハイキング道路(Grande Randonée 2)に沿って、走ってみることにした。
 まずは、ド・フランス一周との連結を考えて、昨年、冬に訪れたコンフラン・サントノリン(Conflin-Sanite-Honorine)の駅に降りた。 懐かしい駅である。不思議なもので、この年になり、フランス語の新しい単語は、とんと頭に入らないが、風景は、しっかり覚えられる。 まだまだ捨てたものではない。 というか、一度訪れた場所を、1年も経たたないうちに忘れてしまうようでは、そりゃ、重傷だ。

  マルタン教会にて 

   トリエル(Triel)の町に着いた。ここから、GR2に沿って、自転車を漕ぐつもりだ。
 この町の教会は、マルタン教会と言われ、ミシェランのガイドブックにも1つ星で載っている。 古さ加減がちょうどよく、印象的な教会だ。特に、門をくぐる石畳が良い。 ここで、自転車に乗っていたら、犬を連れて散歩でもしている感じの老婦人に出会った。
 「こんにちは」と挨拶したら、「まあ、かわいい自転車だこと。 これはなんだ」聞かれた。自転車と答えるわけにもいかないので、「小さいから、真ん中で二つ折りにして、持ち運びができることです」と説明した。 老婦人は、わかったようなわからないような顔をしていた。 「よい一日を、」と言って、私は自転車をこぎ出した。 「あなたもね」と、掛け声をかけてくれた。
 ほんの短い会話だけど、これだけで、この町が気に行った。

  昔どこかでみたような風景だ

 天気が安定していない。
 8月中旬なら暑いはずであるが、街を歩くほとんどの人は長袖だ。 北からの寒気団が、フランス北部を覆っているようで、南にある高気圧との攻め会いで、晴れたと思うと、しばらくすると雨になる。 ちょうど、アイルランドの天気を思わせる今日この頃だ。
 でも、晴間の太陽光線は強烈だ。空気が澄んでいるせいか、太陽に照らされた森の風景は、何とも言えない幻想感を醸し出す。 なにか、異次元にいるような、そんな感覚を覚える。

  プルーストの失われた時を求めて

 エベックモン(Evecquement)の村に「失われた時」通り19番地がある。 なんと、Proustの「失われた時を求めて」をもじった冗談である。
 でも、不思議なくらい静かな町だ。 あながち、失われた時、と言ってもおかしくない不思議な町だ。

 旅を終えて

 パリを抜けて下流に向かうセーヌ川は、何回も蛇行を繰り返す。 それは、ケスタ地形のちょうど段になっているところを、川が下流に向かって流れるからである。
 パリのセーヌ川両岸は、とても穏やかなのだが、トリエルの町あたりでは、とても急峻になる。 変速機なしの自転車ではとても登れない。 森を抜けると遠くを見通せる高台に出た。
 遠くの刈り取りを終えた麦畑、緑の森、そしてテサンクール(Tessancourt-sur-Aubette)村の教会の鐘つき塔、すばらしい景色である。 願わくば、天気がよくて、日が射していれば最高なのであるが、贅沢は言わない。 畑のトウモロコシも刈入れ間近かである。
 自転車で旅をすると、時々、この場所にずっといたい、ここを離れたくないと思う瞬間があるが、それをここで感じた。

 分解せずに、そのまま電車へ

 ムーラン(Meulan)の鉄道駅からパリ行きの電車は、30分毎に走る。 電車を一つ二つ送らせてもよいからと思い、駅近くのCafeに入った。
 またビールである。カウンターに座って、ビールを注文する。 走り終えてのこの一杯が止められないのである。 これがあるから、生きて走るのである。 Cafeのカウンターに座って考えた。
 人生、楽しみってなんだろう。 どんな楽しかったことも1日経てば、忘れてしまう。 10日、1年経てば、ほとんど覚えていなくなり、100年経てば、私が生きたことも、この町を訪れたことも、だれも知らなくなる。という変なことを、考えた。